研究トピックス

2019年08月

バルーン肺動脈形成術 (BPA)

助教 石井 俊輔


ここでは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するBPAについてご紹介します。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症について
肺動脈が持続的に血栓(血の塊)で細くなるもしくは詰まることで、肺の血管の圧力が上昇している状態で、そのことで、血液が体中に回りにくくなったり、心臓の機能が低下する病気です。症状としては、労作時の息切れ、胸部圧迫感などがみられます。心不全(心臓の働きが悪くなること)がひどくなれば、足のむくみ・吐き気・食欲低下も生じ、時に意識消失することもあります。

治療法
慢性血栓塞栓性肺高血圧症と診断された場合は、血液をサラサラにする内服薬を継続し、肺動脈を拡張させる薬を併用することもありますが、内服薬だけで改善させることはとても困難な病気です。以前から、胸を開いて行う外科的肺動脈血栓内膜摘除術が、行われていましたが、なんらかの理由で外科的治療が難しい患者さんに対しては、限られた施設において、カテーテル治療 (BPA)が行えるようになりました。
BPAは、局所麻酔で足の付け根や首からカテーテルという細い管をいれて、詰まった血管や細くなった血管を広げる治療です。数回のBPAにより肺動脈圧が正常に近くなり、酸素を減らすことが可能となります。一方、1回の治療では不充分で平均5-6回の治療を要することが見込まれます。

実際の治療中の風景

実際の治療前後の写真

最後に、
慢性血栓塞栓性肺高血圧症の予後は、治療の進歩により飛躍的に改善していますが、診断そのものが難しい病気のひとつです。
長期間原因不明の息切れが続き、ようやく診断にいたる症例も多く経験します。
気になる患者さんや、御紹介を検討している先生がおられましたら、是非当院へ御紹介頂ければと思います。