循環器内科教室について

そうだったのか、心不全

このDVDは医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士という職種の異なるメンバーがディスカッションを重ねてつくりました。一般の人や医療関係者が見てもわかりやすい内容になっています。

心臓疾患のある人は生活習慣が適切でないと体調が悪くなることがありますので、まず生活環境を整えることが治療の第一歩です。心臓疾患の患者さんは、退院後も塩分と水分の取り過ぎに注意し、日常生活を見直していただかなくてはなりません。薬には利尿剤が入っているため外出の時に服用を控えたり薬がなくなっても気にしなかったり、外来受診に来なくなる人がいますが、再発の原因になりますので、ご理解をいただくように指導しています。

再発は日常生活の注意点を守ることで予げる可能性があります。具体的な方法については、これまで集団教室で医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士がそれぞれ個別に指導していました。例えば薬剤師さんは「薬を飲んでね」医師は「薬を〇種類飲んでね」、栄養士は「塩分控えようね」と言われても、患者さんは「どうしてそれをしなくてはいけないのか」という大事なことが、きちんと伝わっているかどうかは確認できませんでした。

そこでクリニカルパスという系統立てたタイムテーブルを作ったのです。心不全は人によって重症度も違うし、もとの病気によっても違うので定型パスを作るのは難しいと言われていましたが、心不全班の猪又先生がどんな疾患でも使えるように、どんな職種の指導もしっかり入れるように、というコンセプトで北里病院独自のパスが完成しました。

パスを作ったことで、患者さんに必要な話をもれなく伝えられるようになりましたが、職種間で内容を調査すると重複する部分が見つかりました。それだと聞く方も指導する方も効率的じゃない。どの職種がどんな話をするのかをあらかじめ把握して、効率よく患者さんに指導できるようにしようということになり、全職種の人が5部門の話を1時間程度で系統立てて患者さんに説明する「心不全教室」を隔週で開催するようになりました。終了後にはアンケートで理解度を繰り返し確認し、完成形ができました。個別に指導するよりも、教室という場で聞いても理解度は全然変わらないなら、なお効率的でいい方法だと思っていました。が、中には時間が合わず教室に来られない患者さんがいました。それならば教室をビデオに録画して見せればいいということになり、撮影して待合室で流してみました。さらにその動画を全国の管理カンファレンス学会で病院の取り組みとして発表すると、大変評判が良く、欲しいという声もあり、DVDとして製品化することになったのです。全52分ですが、細かいチャプターが入っているので各要素だけも見られるようになっています。

そうだったのか、心不全

再発予防のために機能する心臓二次予防センター

心臓二次予防センターは、年に1度患者さんを診察する施設です。運動の生活習慣がない人には心臓リハビリテーションを勧めて登録してもらっています。

心肺機能の運動対応能力を高めて負担なく動けるようにするために行うのが心臓リハビリテーションで、心臓自体を鍛えるわけではありません。心臓だけでなく全身の血管の動脈硬化の人には、全身運動、有酸素運動、リハビリテーションが効果的ということで、心臓リハビリテーション適用の疾患が増えています。足の閉塞性動脈硬化症の患者さんが、心臓リハビリテーションで回復して手術不要となったケースが3例ありますが、足は第二の心臓と言われていて、重力に逆らって筋力のポンプが心臓に血液を戻せるようになるようサポートもしています。心臓リハビリテーションは睡眠時無呼吸症候群にも効くといった様々な可能性が秘められていて、最近は学会でも注目されています。DVDでは自宅でできる簡単な運動を理学療法士が指導しています。人によってケースバイケースですから、DVDをきっかけに、どのように心不全と付き合えばいいのかを知ってもらえたらと思っています。

患者さんからは、退院してからどうしたらいいのか?という食事や塩分についての質問が一番多いですね。塩分は1日6g未満に押さえないといけないので、DVDには食品に含まれる食塩量の表を付けて、最低限やってもらいたい工夫のポイントを載せています。野菜は香りや甘みがあるので塩は少量、魚や肉はしっかり味付ける、大葉やカボスなど香味野菜で香り付けをする、味噌汁やスープを減らす等です。全部薄味にしてしまうと美味しくないので、味にメリハリを付けるようにしています。

薬剤はたくさんあるためDVDでは語りきれていませんが、大きくカテゴライズすると、動悸などの症状を良くする薬、効果は見えないが心臓を長持ちさせる薬、糖尿病やコレステロールなど環境を整える薬の3種があります。心臓を長持ちさせる薬には抗圧剤が入っているので一定以上の量を使うと血圧が下がります。心臓が弱っている人はもともと低血圧の人が多いため、患者さんが自ら服用をやめてしまったり、専門外のかかりつけ医の先生が処方を止めてしまうことがあります。血圧の数値が低くても症状が出なければ問題ないので、そのあたりの教育をしっかりしたいと思っています。集団指導の時には各人の薬の一覧表をつくって、どんな効果があって、どの種類に入るのか等、確認してもらっています。

症状が悪くなった時は我慢をせず早めに病院へ来てもらいたいのですが、その判断が難しいため、異変に気づいてもらうために普段から体重管理をしてもらっています。北里オリジナル心不全ノートをつくり、前日との増減体重を記入する欄を付けました。心臓の働きが壊れると身体の中に体液が増え、前の日と比べて体重が2?3キロ増えるので、日々、前日と1週間前の体重とを比較することが大事であり、心不全の悪化を知らせる指針になります。受診すべきかどうかを自分で判断できるようにチェック項目も記しました。

心臓二次予防センターの1日の外来患者は17人です。年に1度の検査であり結果説明をするため診察時間は自然と長くなります。家族構成や食事をつくる人は誰かということまで介入して、患者さんの生活に1歩踏み込まないといけません。検査では、薬の確認、栄養の相談、看護師から生活指導を受けて終了となりますが、全患者さんのかかりつけ医に、今年の結果の報告書を送っています。心臓専門医からのリコメンドを必ず入れて、かかりつけ医の専門レベルに応じた内容にしていますので、非心臓専門医はすごく助かると言ってくれています。心臓二次予防センターには約4800人が登録されています(2015年8月時点)。このシステムがあることで、患者さんが安心して当院からかかりつけ医に戻ることが可能になっています。

診療講師

野田 千春

専門分野:
心不全・再生医学・心臓リハビリテーション(二次予防センター)
出身大学:
北里大 H9年卒
資格:
日本内科学会総合内科専門医
日本循環器学会循環器専門医
心臓リハビリテーション認定医
日本禁煙学会認定指導医
日本医師会認定産業医