循環器疾患は「急性期治療」だけにスポットがあたっていますが、実際後量はそこからが始まりです。心筋梗塞の治療をして「良くなりましたね」と肩を叩いて退院させることだけが医療である時代は終わっています。二次予防を推進し、再発を可能な限り防ぐことも医師として重要であると考えます。病気を治療するのではなく、患者の人生に寄り添う医療を展開したいと考えています。
当院では2001年に心臓二次予防センターを設立し、治療後のフォローアップに対応しています。退院後は通院しやすい患者さんの近隣の主治医に引き継ぎますが、年に1度は当院で検診をしていただき、再発予防のための教育や最新の治療法の説明し、患者さん向けに治療を考える会を実施しています。また、開業医の医師を対象に、二次予防連携の会も開催し、最新の治療法をシェアして一緒に勉強しています。検査結果を共有し、処方の変更などを提案することもあります。
再発予防の効果的な手段として、リハビリテーションにも力を入れています。心臓リハビリテーションは世界的にもトップレベルで、欧米の学会でも発表され有名雑誌に論文も出しています。医療は基本的に薬投与による効果を求めますが、死亡率の低下において、リハビリテーションは薬を上回るほどの効果が出ています。
急性期治療~リハビリテーション~退院後の二次予防という一連の流れを提供出来ることが我々の強みではないかと考えています。患者さんの予後を良好にする目的で整えられた「途切れない医療の提供」と「万全のフォローアップ体制」です。
循環器領域には、加齢にともなって急速に増えていく病気がいくつもあります。動脈硬化の場合は危険因子がわかっています。糖尿病、高血圧、脂血異常症、肥満、喫煙。それを治療することが発症の予防につながります。高齢化に伴って増加する心房細動に関しても、適切な薬物療法の臨床試験などを多く行っているのみならず、アブレーションを含む高度な医療を提供しています。
北里大学循環器内科では、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI)や、慢性血栓性肺動脈閉塞症に対する経皮的肺動脈拡張術(BPA)など新たな侵襲的治療を積極的に施行しております。
さらに、近年患者の増加が著しい成人先天性心疾患に対しても積極的な関与を行っており、あらゆる循環器疾患患者に対して対応出来る診療体制が出来つつあります。
卒前、卒後教育にも力を入れており、将来の世界を担う循環器内科医の育成を心がけています。
阿古 潤哉