父が白血病で亡くなり、血液関係の医者になりたくて医学部に入りました。最初、血液内科に入りましたが、まだ患者さんに本当の病名を告げられない時代で、癌の患者さんに嘘をつき続けるのが苦痛でした。循環器内科は日頃から真実が話せる科で、自分の性格からするとここだと思いました。
最初から循環器内科へ熱い思いがあったわけではありません。しかし、心臓の筋肉をつくる、再生医療をする等、急速な医学の進歩とともに循環器内科の内容がアカデミックになってきて、基本的な生命現象が集まる科であることがわかりました。脳はある部分が動かなかったらどこかに支障が出ますが、心臓は一部がおかしくなっても全体としては機能するため、ある程度試行錯誤ができるのです。臨床的にもやりがいがあるし、基礎についてもチャレンジできる科でした。
2025年になると、2人の働き手で1人の老人を支える時代が来ます。心・血管病は三大疾患のうちふたつであり、より一層適切な治療法が要求されるようになっていきます。
学生時代、大学受験の共通一次で全教科で平均点を上回った時、恩師から、君はそのバランス力を活かせる職業に付いた方がいいと言われたことがありました。僕は何かに突出した才能は無いけれども、心不全に出合った時、この処置が自分の特性に合っていると確信したのです。
若い人には、きちんとした医療ができるものの考え方と研究を経て、実力をつけるために学んでほしいし、僕も学ばせていただきたい。来る者を拒まずなので誰でも来てください。自分が担っていることは、全体の中の小さな歯車でしかないことを認識することも大事なことです。いろいろな人に参加してもらい、活気あるチームでやっていきたいと思っています。
当班は女性も多いです。女性は辛抱く、細かい仕事もこなします。画像の仕事は比較的つぶしが利く分野なので、子育てをしながら仕事を続けられると思います。
猪又 孝元
新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学 主任教授