研究トピックス

2018年05月

当院におけるカテーテルアブレーション

診療講師・不整脈班チーフ 深谷 英平

不整脈診療は、その難解なイメージから、循環器の専門医でもやや敬遠する先生もいらっしゃいます。薬物治療もさることながら、最近はカテーテルアブレーションによる不整脈の根治術が進歩し、診療の中心になってきています。今回はこのカテーテルアブレーションについて、当院の現状を御紹介いたします。

まず、対象疾患ですが、ほぼすべての頻脈性不整脈がカテーテルアブレーションの対象になります。具体的には、発作性上室頻拍、心房細動、心房粗動、心室性期外収縮、心室頻拍などが代表例です。
近年、全国的にも症例数が増えているのが、心房細動に対するカテーテルアブレーションです。心房細動は年齢とともに有病率が増える疾患です。高齢化社会を迎える本邦では、今後さらに心房細動患者が増えることが予想されています。心房細動のカテーテルアブレーションはまだ歴史の浅い、比較的新しい治療です。1998年に心房細動の発症起源となる異常発火が肺静脈から発生すると報告され、以来心房細動はカテーテルで直し得る時代になってきました。具体的な治療は、肺から心臓に動脈血を送る通り道である肺静脈(通常左右2本ずつ)とその先につながる左心房の電気的な交通を遮断・隔離することで、異常発火を心房内に伝達させないということで心房細動のスイッチが入らないようにする治療です。これを肺静脈隔離術といいます。心房細動病初期の発作性心房細動の方は、この治療のみで9割以上の方が発作を抑えることができます。具体的には、高周波による熱で心筋の一部を壊死させ、電気的交通を遮断します。図1/2に示すのは、術前に施行した左心房・肺静脈のCT画像を元に、三次元マッピングシステム(CARTO:図1やEnSite:図2)を用いて実際にアブレーション実施した部位が示されています。両側の肺静脈を大きく一括で円を描くように焼灼し、電気的な交通を遮断しています。また最近では、バルーンを用いて、冷凍凝固(クライオ)バルーンアブレーションも実施しております(図3)。こちらは直径28mmのバルーンを用いて、4本の肺静脈内にバルーンを挿入・閉塞させ、窒素ガスによる冷凍凝固を実施します。上記の高周波に比べ、一気に凝固できるため、手術時間が短縮できる反面、肺静脈の形により適応できない症例がいる点や、肺静脈隔離以外の細かい追加ができないなど、それぞれ一長一短があります。今のところ治療成績には差がないとされ、当院では患者さんそれぞれに合わせた最良の方法を選択しています。


最後に当院の治療件数ですが、近年急激に症例数が増えております。激戦区神奈川県で年間症例数は上位にランクインしております。2016年で約260例、2017年は296例、2018年は350例ペースです。治療成績も全国平均と同等以上、合併症率は過去の報告より少ない数字を維持できています。
気になる患者さんや、御紹介を検討している先生がおられましたが、是非当院へ御紹介頂ければと思います。