医局長のつぶやき

2016年05月

最新のSHD治療はヨーロッパに学べ!

Euro PCR 2016, Paris(2016年5月17~20日)

循環器内科 柳澤 智義

言い切ったタイトルをつけてしまったなと思いつつ、Euro PCR 2016で学んできた内容を復習してみるとやはり最新カテーテル治療は海外、特にヨーロッパだと改めて感じ、残念なことにまだまだ日本は追いついていないのだと痛感させられました。(SHD治療に関してのみです。)今年も5月17~20日にフランス、パリで開催されたEuro PCR 2016に参加しましたのでご報告させて頂きます。

今年もまた、この季節がやってきました。勝手に春のフランスと言えばEuro PCRと決めてしまっているぐらい楽しみな学会で、去年に引き続き2度目の参加です。Euro PCRは経カテーテル治療(冠動脈、SHD、下肢動脈、頸動脈など)のインターベンションライブデモンストレーションに特化した学会です。毎年10,000人を超える参加者がおり、この分野では世界最大級ではないかと思います。毎日、毎時間帯に各分野の有名な施設からライブデモンストレーションが放映されており、数えてみると全期間で計40症例にも達し、世界9ヶ国、12施設、50時間を超えていました。世界のトップと言われる施設、術者の手技やストラテジー、知識を解説付きで勉強できる、なんとも夢のような学会なのです。そしてその夢の世界へ入るためにはチケット(学会費)が必要なのですが…。夢からも覚めてしまう学会参加費…。事前参加申し込みですら、なんと1150.00 EUR。一桁違うのではと何度も見直してしまう金額ですが、それでも行きたいと思う学会がEuro PCRなのです。
去年に引き続き、当科からは阿古教授、目黒先生と私の3名で参加しました。去年のパリは常に晴れており、春の装いで運河を一望するテラス席でワインを片手に素敵な時間を過ごす事ができたのですが(写真1)、今年はほぼ雨、たまに晴れ間。そして、寒い。(写真2、3)街を見渡せば、上着のみならずマフラーをしている人もちらほら。

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(写真1)2015年の回想【vin rosé 】

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(写真2、3)2016年の実際【とにかく雨】

完全に春気分でパリに降り立ってしまった事を後悔しつつ、学会会場であるLe Palais des Congrès de Parisにやや厳しいセキュリティーを通過し入ると様々な国と地域から集まった参加者によりスーツを着ていると暑いぐらいに熱気を帯びていました(写真4、5)

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(写真4、5)Euro PCR 2016開幕 Openig sessionはTAVI Live demonstration 手技時間は驚愕の15分

今回のEuro PCRではSHDの最新治療/手技を学ぶこととinnovation deviceに触れる事を目的として参加しました。(写真6)

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(写真6)当科、目黒健太郎先生の発表!(Clinical Case)【Usefulness of intracardiac echocardiography during balloon aortic valvuloplasty】座長はなんと、Alain Cribier先生(写真左から2番目、白髪の男性)TAVIの生みの親です。

SHDの領域では、ヨーロッパは世界に先駆けて新しいdeviceが利用できることから日本の1歩、2歩、それ以上に先に進んでおり、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)や僧房弁閉鎖不全症に対するMitra Clip(写真7)だけではなく、左心耳閉鎖術(写真8)は既に確立した治療法となっています。さらには、SHD治療の次世代として、様々なInnovation deviceが発表されていました(写真9)TAVIの新たなdeviceは数多く発表されており、経カテーテル僧帽弁置換術や僧帽弁輪形成術、三尖弁置換術/形成術、左室縫縮術、両心房シャント術などもどしどし臨床治験が始まっていました。ヒラメキの凄さに唸ってしまうdeviceやシステムが数多く発表され、Euro PCR 2016のセッションのなかでもInnovationのセッションは立ち見となるほど大いに盛り上がっていました。

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(写真7、8、9)LAA closure, Mitra clip, innovation devive

初めて見るdeviceにワクワクしつつ、なぜだか焦燥感にとらわれつつ、いつかは【Kitasato】の名前を冠したNew device開発を夢見てしまいました。
そして、今年も最新のSHD治療を見学すべくHôpital Henri Mondor(目黒先生が留学されていた施設です。)に行き、Professor Emmanuel TeigerによるTAVIと左心耳閉塞術を見学させて頂きました(写真10、11)。次世代のTAVI、左心耳閉鎖術、心エコーがマージされたAngio装置など、日本では未だ導入されていないdeviceやシステム、装置はとても魅力的で刺激的でした。(欲しい、使ってみたい…。)

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(写真10、11)Hôpital Henri MondorでTAVI、LAA closure見学

真面目に連日、学会に参加し、当然一切観光もしませんでしたが、やはり海外学会の楽しみは普段会えない先生方との会食ですので、連日夜遅くまで飲んでしまいました。
まずは写真を撮り忘れてしまいましたが、慶應義塾大学の林田先生を中心としたSHD治療をやりたい、やっている若手、日本人の集まりに去年と同様参加してきました。同じ志を持った5-6施設、10人がTAVIに関して、SHD治療に関して話が途切れることがないほどに熱い議論を交わしました。【切磋琢磨】という言葉が本当に合う会でした。そして、これまた写真を撮り忘れてしまいましたが、Hospital Clinic Barcelonaに留学中の石田弘毅先生やInselspital, Bern University Hospitalに留学中の阿佐美匡彦先生をお招きしての昼食会や夕食会は留学中の研究から生活までとても興味深い、刺激的なお話しを聞くことができました(写真10)。

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(写真10)阿佐美匡彦先生とともに昼食会。阿古教授はこの時、steaks tartaresを召し上がっていました…。(後半に続く)

そして、フランス、パリと言えば忘れてはいけないのが、北里梨紗先生。
パリでも開催した【シタッパーズの会】には、塩野先生や Hôpital Henri Mondorに留学されている澤城大悟先生や高橋政夫先生をお招きして、北里梨紗先生のアテンドによる素敵なお店でお勧めのChampagneやVin blanc、Vin rougeを楽しみながら美味しいフランス料理を楽しみました(写真11)。当然、何本もの素晴らしいVinが北里先生の隣で空瓶となっていました。

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(写真11)写真に阿古教授のお姿が…。体調を崩されたとのこと…。もしかして、steaks tartaresが原因?

今回のEuro PCRはパリやベルギーでのテロ後であったためにやや不安もありましたが、得られた知識は多かったと自負しています。北里のSHD治療は始まったばかりであり、知識や技術を学び、経験を積んで、世界に発信できるようにとにかく頑張るしかないと(Vinを飲みながら)心に誓ったフランスでした。