循環器内科 中村 洋範
『Tuttle le strade portano a Roma (すべての道はローマに通ず) 』
昔の誰かが述べたこの諺が意味するところは、紆余曲折を経て、それでも最終的には正解(ハッピーエンド)にたどりつく、というもの。
私の生涯初めての国際学会はこの諺に集約される壮大な旅となった。
欧州心臓病学会学術集会 (ESC Congress, 2016/8/27-31)が開催されたのは世界遺産の圧倒的な多さを誇る「永遠の都」ローマ。羽田を夜中に出発、パリ・シャルルドゴール空港での乗り換えを経て、約14時間のフライトの末イタリア・フィウミチーノ空港へたどり着いた。空港からホテルへのタクシーでの移動中、ローマのシンボルともいえるコロッセオが垣間見え、その雄姿に一同のテンションは一気に舞い上がり、異国の都にいることを実感した。都は雲一つない快晴であった。整然とした街並みと古い歴史が見事に調和し、それはとても美しく、目につく店はどれもがシャレて見えた。テルミニ駅徒歩圏内のホテルでチェックインを済ませ、石末先生ファミリー、五十嵐先生とランチ(写真①)。その後はコロッセオ、トレビの泉をバスで廻った(写真②)
![]() 【写真①】安息の昼下がり |
【写真②】妻と廻る「ローマの休日」 |
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【衝撃】奇跡の軌跡
一方、東條先生含む他のメンバーはローマに着いた初日にも関わらずコロッセオ、真実の口、トレビの泉を徒歩で廻りきるというなんともtough-guyの所業をこなしていた(脱帽)
ESCの会場はフィエラディローマ(Fiera di Roma)。ローマ市内からタクシー・電車で1時間程かかるため移動が非常に億劫であった。しかしさすがアメリカ心臓病学会(AHA)を凌ぐ世界最大規模の学会といわれているだけあり多国籍の参加者でごった返していた。当教室からの演題採択者はドクター、コメディカル含め10人、演題数は12演題。今回私が発表させて頂いた演題は、庭野慎一先生、裕恵先生のご指導のもとかねてより行っている基礎研究「心房細動モデル犬におけるリラグルチド(GLP-1アナログ製剤)の心房細動抑制効果についての検討」である。拙い英語ではあるが自分のやっている研究を少しでも世界の研究者に知ってもらいたい一心でプレゼンテーションした(写真③)。各国の研究者からさまざまな質問や意見をもらい、日本では決して味わえない有意義な時間を過ごすことができた。
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【写真③】学会会場の勇者たち
不整脈(筆者、五十嵐先生、石末先生、及川先生)、心不全(池田先生、鍋田先生、飯田先生)、虚血(藤吉先生、橋本先生)、リハ(浜崎さん)それぞれ各分野の研究者が世界に向けて発表する勇姿をみて、北里発信でもっとoutputを出していきたいと感じた。
今回の旅行でローマ以外にも様々なイタリアの名所を巡ることができた。バチカン市国(写真④)は言わずと知れたカトリック教会の総本山。その国境はすべてイタリアと接しており城壁によって敷かれているがなんなく徒歩で超えられる。面積は約0.44km2と独立国としては世界最小でディズニーランドよりも小さい。その狭い領土の中にサン・ピエトロ大聖堂、バチカン宮殿、バチカン美術館、サン・ピエトロ広場などが肩を並べていた。
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【写真④】バチカンには、私がどうしても見たいと切望していた絵がありました
システィーナ礼拝堂の天井画として描かれているミケランジェロの代表作「最後の審判」を目にした時、中学生の時に美術の先生が言った一言が蘇った。「一生のうちに一回でも見たら忘れられない絵がここにある。」
(ふむ、なるほど。撮影禁止か。)
次いでアマルフィ海岸(写真⑤)。イタリア南部のソレント半島南岸のサレルノ湾に面した「世界一美しい海岸」と言われるイタリア屈指のリゾート地である。切り立った岸に張り付いたような町並みはとてもかわいらしく、海に落ちないように踏ん張っているようでもあった。美しい海岸を見ながらの白ワインは格別であった。あまりに格別であり、格別であるが故、私は少々酩酊状態になった。気づいたら、レストランの食卓の上に、羽田空港でレンタルしたポケットwi-fiを置き去りにしてきてしまった。帰りの電車の中では終始、妻に頭を下げ続ける結果となった。
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【写真⑤】アマルフィに置いてきた夢
写真左の食卓、丁度フォークの上方に置いてあるポケットwi-fi。弁償額は驚愕の値段であった。
ローマからユーロスターという特急電車に乗って1時間半ほど北上すると「花の都」フィレンツェに到着する。町のどこからでも望むことができる丘のようなドゥオーモの雄姿に感動しながら、ウフィツィ美術館のあるシニョリーア広場のバルで1.6kgのティーボーンステーキを食した。ビールがこんなに美味しいと思える瞬間はきっとこの先訪れないのではないかとさえ感じた。アルノ川にかかるフィレンツェ最古のヴェッキオ橋からの眺望をほろ酔いで歩きながら会話を楽しんだ。また、この日はピサの斜塔も訪れることができた。
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【写真⑥】妻からのミッション。フィレンツェで幻のイノシシを捕まえよ
触ると幸せになれるという謎のイノシシ像の鼻を皆でなでて妻はご満悦であった。
ちなみに地球の歩き方でのおすすめ度は★0個
夜には阿古教授、庭野先生夫妻を交えた宴が催され、ローマ滞在最終日を彩るに相応しい愉快な食卓となった。
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【写真⑦】最後の愉快な晩餐
あまりに充実したイタリアの旅にも終わりを告げ最終日が訪れ、スペイン広場周辺で買い物を済ませ空港へ向かった。シャルルドゴール空港までたどり着き、さあいよいよここから日本へ帰ろうと飛行機に搭乗した。しかし、待てども待てども一向に飛行機は空へ飛び立たない。機内放送が流れた。「飛行機の故障により今回のフライトは欠航となりました。」
「…ぇええ、なんてこった!」
ということで、紆余曲折を経たが無事に日本に生還することができた。その道中は決して楽な道のりではなかったが、様々な困難を皆で共有することができたし、絆を深めるとても良い経験となった。まだまだここには書ききれないエピソードもたくさんある(藤吉珍道中、ダッチ安堵ガッバーナなど)が、それはまた飲みの場でということにして、ここで筆を置かせていただく。
このレポートを最後まで読んでいただいた未来の循環器内科の諸君、こんなに世界と渡り合える機会をもらえる科は多くない。是非、入局して一緒にアマルフィへ行こう。ワインは飲みすぎないように。
最後に、今回このような経験をさせていただいた阿古教授、庭野慎一先生、裕恵先生、また我々が留守の間病棟を守ってくれた医局の皆さまに心から感謝の気持ちを込めて、この報告を終わりたいと思う。
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