医局長のつぶやき

2016年10月

APHRS 2016 レポート

循環器内科 石末 成哉

2016年10月12日から韓国で開催されたAPHRS(Asian Pacific Heart Rhythm Society)2016に参加してきたので、ここに報告します。
羽田からボーイング787のシートに身を忍ばせると、深い眠気に苛まれると予感したのですが、いままでと違う。そうです、ボーイング787はタッチパネルのディスプレイが付属しており、シートピッチが少し広くエコノミーでもいつもと違った高揚感を感じました。しばしコンソールのリモコンや画面で、映画や音楽コンテンツをいじくり倒しているとあっという間の3時間弱のフライトで韓国に到着。
なんとなく韓国を上手く街歩きできると、勝手に想像していたのですが、現実は甘くはありませんでした。その困難とはハングル。まったく読めず、表記している漢字と英語の読み方が理解できないのです。そうだGoogle map先生に相談だ!………。なんとGoogle map先生もハングルに変換されていて…OMG。ここはデジタルデバイスをとっとと投げ捨て、アナログ的にインフォメーションのお姉さんに相談です。希望の行き先を伝えると、地下鉄の路線図を蛍光ペンでガッチリチェックしてくれて、人のやさしさが身に沁みました。なれない異国の地下鉄でキョロキョロと不安になりながら、電車の揺れに身をゆだねていると、日本で駅名などの英語表記が意外と見えにくいことや、地下鉄大江戸線などの日本語の路線名を果たして日本に訪れる外国人観光客は理解できるのかと疑問に思いました。TOKYOオリンピックに向けて、そういったコンテンツも整備する必要に迫られていると、勝手に都議会議員みたいな妄想を膨らませ、やっとホテルに到着。道のりはドキドキでした。
前置きが随分と長すぎですが、今回のAPHRSには当院からの発表は筆者である石末と藤石の2名がポスターセッションで発表でしたが、それぞれの演題の簡単に紹介します。まだアジアでの導入が進んでいないWCDの当院での実施データとWCD適切作動例の提示を含めて藤石先生が10月13日に発表しています。もう一方で、ステロイド長期内服症例におけるペースメーカー植え込みに伴う対側気胸の稀有な合併症の症例を私が10月15日に発表しました。

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左)藤石先生ポスターとともに
右)筆者 ポスターとセルフィ

今回のAPHRSでは、Brugada/J-wave症候群の既知の報告から最新の知見や、デバイス感染の予防のための抗生剤含有のシートの紹介などがあり、各演題発表よりもシンポジウムやプレナリーセッションが中心に構成されていました。それに加え、不整脈屋さんの集会にふさわしく、焼灼困難なAVNRT・AVRTへのTipsや診断困難なPSVTについてなど頭がパンクしそうな内容が目白押しでした。それぞれのセッション会場はどれも、趣向を凝らしていて、エントリーバッジ・プログラムも素敵なデザインで、日本の学会もこうなればと心の端っこで唱えていました。今回の学会は参加したくなるセッション内容が多く、会場をあちこち歩き回り、知りたいことや勉強不足の箇所など課題が山積していることに目を白黒させてしまいました。また、それぞれのセッションのLeaderたちが多く参加されていたので質問したい点があったのですが…、多くの聴衆の中、英語で質問するスキルと勇気を持ち合わせていませんでした。もっと英語で話す練習をしなければ…。また課題がみつかりました。

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学会のあとは韓国料理に舌鼓を打ち、KASビールというBudweiserに似た軽い味わいのビールで乾杯。むこうの焼肉のスタイルは、お肉を注文すると自動的にキムチやサラダ・茶碗蒸しのようなものなどがセットになっており、おばちゃんが手際よく焼き当番をしてくれます。おばちゃんのGOサインを目配せで感じ、マシッソヨ。(おいしいを意味する韓国語)

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藤石氏はひと足先に帰国の途に就き、私の代わりにチーフ業に勤しんでくれ、15日に私の発表を終えました。英語のスキルアップがしたいと思い馳せながら、学会会場を後にしました。夕食後ホテルの近くを歩いていると、おしゃれなカフェ&バーを発見。落ち着いた趣で、お酒でも飲みながら羽田空港で購入した村上春樹の本の世界に浸ること間違いなしと、ドアに手を掛けました。間接照明の店内は、居心地よく客は私一人でした。韓国人のオーナーにカウンター席を勧められ、席に着きました。オーナーは28歳の青年でオーストラリアに留学経験があるようで、英語で気さくに話かけてくれました。村上春樹の世界に浸るのは止して、英会話のスキルアップに励むことに予定を変更。お酒の力を借りて人見知りの皮を脱ぎ捨て、空港や地下鉄で困ったことや日本の漫画のことなど様々な内容を話し、そして、オーナーの彼女自慢の話に花咲かせていました。なぜか会話が通じたのが不思議ですね。ヨクサム駅の近くに行くことがあったら、ぜひRelaxing Coffee-bar D.VOLUPに行ってみてください。(写真撮るのを忘れました。)
今回の学会参加で、不整脈関連の内容を学んだだけではなく、英会話の向上、モチベーションを上げさせる多くの事象に出会いました。学会発表にあたり多くの先生方の御指導をいただいたことや、チーフ業を代行してくれた同期に、この場を借りて感謝いたします。
今後も精力的に邁進してまいりますので、皆様の御指導御鞭撻のほどよろしくお願いいたします。