医局長のつぶやき

2017年10月

K-ACTIVE 神奈川循環器救急レジストリー 市民公開講座を終えて

循環器内科学 助教 佐藤 伸洋

医局長のつぶやき読者の皆様、お元気ですか?「100歳までニコニコ」を呼び掛けている循環器内科 佐藤です。書き始めるにあたり以前の記事を読み返し(http://www.med.kitasato-u.ac.jp/~med_2/topics/topic2014oct.html)、前作を超える作品しなければいけないというプレッシャーを感じる反面、数々の名作を生み出していったかつての文豪たちも同じような境遇であったのかと、彼らと肩を並べているような心境で筆を執っています。
さて、今回はK-ACTIVE(神奈川循環器救急レジストリー)主催による市民公開講座です。K-ACTIVEとは、神奈川県下の参加施設(50施設以上)による急性心筋梗塞患者の時間経過、背景、予後などの現状を把握する2015年から始まっているレジストリー研究です。
一般市民の方々への講演ですので、「心筋梗塞ってどんな病気?」、「心筋梗塞の最新治療」という基本的な内容から始まり、地域を代表する先生方へも講演をお願いしました。私は「心臓リハビリ」について担当となりましたが、普段、扱い慣れていない話題ということに加えて、骨折や脳卒中後の一般的なリハビリとはまた違った意味合いをもつ心臓リハビリを皆様にうまく伝えることができるのか、少し不安なところがありました。ここで賢明な読者の方々は「題材の心配をする前に、人前で話す苦手は解決したのか?」と疑問を持たれたかもしれません。前回の学会発表からこの3年間、「発表 緊張しない コツ」など思いつくワードは全て検索しつくしました。そして、改善の兆しがないこの苦手意識は、(もしかしてセロトニン不足・・・?)という一つの結論に至り、セロトニン活性のためにヨガ、座禅、太極拳がよいと聞き興味を持ちましたが、未だ経験はありません。そんな中、今回はさらに司会進行も承り、「司会 テンション」など検索しない夜はなく、神はなにゆえこれ以上の試練を与えるのか・・・、以前の私であればそう運命を呪っていたことでしょう。しかし、前回の学会発表で培った緊急事態への対処法から無意識のうちに巨大動画共有サイトへと導かれた私は、すでに求める司会者動画の前に座っていることに気付きました。こうして、太極拳の動画巡りによるセロトニンの確かな活性化と、ジャパ〇ットた〇た社長から司会者のなんたるかを学び、万全の態勢で当日を迎えることができたのでした。
10月7日 前日までの大雨と午前中までしとしとと降っている天候の中、来場の方のお足元が心配されましたが、いざ開場すると50人を超える市民の方々にお集まりいただき、中には以前に心筋梗塞後で外来通院されていた患者様の元気なお顔も久しぶりに拝見することが出来ました。公演が始まると市民の皆様は一人3席ほどのゆったりとした空間の中、お好みの姿勢でリラックスし聴講している様子で、最後の質問コーナーもあらかじめ用意していた質問以外に来場者からもいただき、盛り上がりの中に終わることができました。

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筆者(セロトニンの力を十分に引き出すことができず、表情が硬い)

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左から、大和成和病院 菅原重忠先生、大和市立病院 久保貴昭先生、北里大学病院 下浜孝郎先生

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質問に答える下浜先生

本邦のPCI施行施設はセンター化している諸外国に比較して施設数が多く密集しているため、治療までの時間経過が早いと期待されますが同等か遅い印象です。日本全体における急性冠症候群のデータはほとんどなく、また、地域差等も大きくあると思われ正確な把握ができていないのが現状です。今回の市民公開講座を通じて市民皆様の健康意識の高さに触れることができ、K-ACTIVEのデータからまずはこの神奈川県の医療の向上に役立てられればと、その思いが一層強くなりました。
本市民公開講座を開催するにあたり、藤沢市民病院 塚原健吾先生、国立相模原病院 森田有紀子先生、大和市立病院 久保貴昭先生、大和市立病院 菅原重忠先生、北里大学病院 下浜孝郎先生、北里大学 阿古潤哉先生、昭和大学藤が丘病院循環器内科 鈴木洋先生の講演とご指導に感謝いたします。また、貴重なデータを登録いただいているK-ACTIVEの参加施設と協力いただいた市民の皆様に深く御礼を申し上げます。
最後に、つぶやき執筆は3年ぶり2回目の執筆となりますが、どういうわけか今回はなかなか思うように筆が進みませんでした。こんな時に文豪たちはどうしていたのでしょうか。彼らは旅館へ泊まり込み温泉や非日常的な空間からすばらしい作品を生み出していたことを知り、私にも次回のつぶやきからは文豪たちが愛した温泉旅館で執筆させてくれるのではないかと期待しています。