医局長のつぶやき

2018年07月

2018年7月 第9回失神研究会 in 昭和大学

医療系研究科博士課程3年 西成田 亮

2018年7月15日に昭和大学で『失神研究会』が開催され、光栄にも発表の場をいただきましたので、その報告させていただきます。

失神研究会は、今回で9回目となります。10年程前に昭和大学の循環器内科教授でいらっしゃった小林洋一先生(現代表世話人)が、関東近隣の病院を集め立ち上げた研究会とのことです。失神、前失神は日常診療でよく遭遇する病態ですが、その診療における体系的なアプローチが議論されるようになってそれほど長い歴史があるとは言えません。多方面からの切り口が重要になる失神診療において、診療科の垣根を超え、真の臨床力を備えた医師や医療従事者を育てることが、この失神研究会のコンセプトです。まだ歴史は浅く、比較的小規模ではありますが、議論の内容も濃く、非常に有意義な研究会となりました。

会場は、昭和大学上条講堂という北里大学でいうIPE棟ホールのような場所で行われました(写真1,2,3)。写真の通り、やや年季の入った歴史を感じる建物でしたが、2019年には創立90周年記念で「新上条講堂」が完成予定のようです。前日が日本不整脈学会の最終日であったにも関わらず、多数の不整脈関連の先生方が参加していました。そもそも、私が今回この会に参加させていただいた経緯は、本年度私と堀口先生が出向(週1回)している都立広尾病院の循環器部長深水誠二先生にお誘いいただいた事がきっかけになります。循環器内科のなりたての頃から失神という病態に興味を持っていた私にとって、失神診療のエキスパートが集まる本研究会は非常に楽しみなものでした。

(写真1)昭和大学旗の台キャンパス2号館前

(写真2)昭和大学上条講堂外観

(写真3)昭和大学上条講堂内

研究会の内容は、一般演題(全13演題)+ランチョンセミナー、特別講演で構成されていました。一般演題は遺伝性不整脈疾患、反射性失神・その他、失神の診断と治療の3部構成で、私は第3部の『北里大学救急部門における失神診療の現状』という演題で発表させていただきました(写真4,5)。座長の先生やホール内の先生方からいくつかご質問、ご指摘をいただき非常に勉強になりました。他演者の発表内容としては、特に小児冠動脈起始異常と冠攣縮の合併や植込み型ループレコーダーについての症例発表が散見されました。特別講演では『認知症と失神』について山田正仁より(金沢大学神経内科教授)ご講演をいただきました。認知症診療の進歩と失神をきたす認知症(特にレヴィー小体型認知症)について、最近の知見も含め、非常に興味深い内容でした。最後の閉会の挨拶では、小林洋一先生(代表世話人)より、2018年のESCのガイドラインが改訂に関し言及がありました。私の発表内容に重なりますが、救急部門における失神初療に関し、リスク層別化のための因子やリスク層別後の対応(写真)等、日本とヨーロッパで若干の違いがあり、特に中等度リスク群(ESCガイドラインではneither high nor lowと記載)は、失神外来でのfollowや入院加療をすべきとの記載されました。日本と比較し、より詳細なリスク層別と細かな対応が求められているのが、ヨーロッパでの失神診療の現状のようです。

(写真4)発表タイトル

(写真5)発表中

そして、上記最後の小林先生の閉会挨拶の内容を聞きながら、なんとなくもしかして……と思ってはいましたが(笑)、大変光栄なことに私の発表内容が優秀演題賞に選出されました。ご指導いただきました先生方、本当にありがとうございます。私用があり表彰式は出席できず、数時間後に事務局からの連絡で知ったという残念な状況ではありましたが、大変喜ばしい事でございました(写真6)。

(写真6)失神研究会優秀演題賞

今回、この失神研究会は日本不整脈学会(JHRS)に続きかなりタイトなスケジュールでの発表となりました。研究会内での活発な議論や他病院での発表内容を通し、他病院の先生方が何をどのように考えているか、違った考え方と同様の考え方を肌で感じ、さらにそこから新たな発見がありました。まさに“知識を得てこれを伝える”という失神研究会のコンセプトにマッチした非常に有意義な研究会であったように思います。来年度以降もまた機会があれば参加させていただきたいと思います。不在の中、ご迷惑をかけしました先生方、発表にあたり御指導いただきました多くの先生方、そして唯一発表を聞きに来てくれた堀口先生(笑)に深く感謝を申し上げます。今後もさらに精進して参りますので、何卒御指導御鞭撻の程よろしくお願いいたします。