医局長のつぶやき

2019年06月

第30回日本心エコー図学会 ~エコーで視る未来~

循環器内科学 助教 前川 恵美

令和元年に記念すべき第30回を迎えた日本心エコー図学会に参加しましたので、報告します。5月10日から12日に松本にて長野県立こども病院の安河内先生が大会長として開催されました。「エコーで視る未来:Echo-vision for the future」というテーマをあらわして、成人先天性心疾患 (ACHD)と、弁膜症や構造的心疾患 (SHD)に対するシンポジウムが多かったのが印象的でした。
さて、当科の本学会での活動です。
トップバッターは、心不全班の鍋田先生です。鍋田先生はU-40という臨床だけではなく研究にも熱い心不全医の集まりの中心として活躍されており、若手心エコーフェローの会でコメンテーターを務めました。金曜日のため聴きに行けなかったのが残念です・・。
今回の学会ではポスター会場に工夫が凝らされており、なんと長野ワインを片手にしながらの参加でした。きっと、少しくらいアルコールが入った方が活発な質疑応答になるからでしょうか、とても和やかな雰囲気でした。そんな中、私は「可動性のある心内の石灰化腫瘤を有する透析患者の2症例」についてポスター発表を行いました (写真1)。近年長期透析患者の増加に伴い異所性石灰化や、僧帽弁輪石灰化 (MAC)、無形性腫瘍性病変 (CAT)など呼ばれる心エコー図所見が注目されています。本発表を通じてMACやCATのような病的な所見だけでなく、正常組織が石灰化する場合もあり、これらの所見を見たとき、手術リスクの高い透析患者に塞栓症の予防としての手術は慎重に判断する必要があることを伝えてきました。発表のため、あまりワインが飲めなかったのが残念です。

写真1:前川 (筆者)ポスター

当科のACHD診療の中心である小板橋先生と郡山先生は「生涯病としての先天性心疾患:ファロー四徴症」のシンポジウムで活躍されました (写真2, 3)。藤田先生は「選択的肺静脈コントラストエコーにより低酸素血症の原因を特定しえたファロー四徴症心内修復術後の重症右心不全の一例」について口演発表でした (写真4)。2019年4月1日から当院は日本成人先天性心疾患学会より成人先天性心疾患専門医総合修練施設に認定されました。今後、北里からACHDに関する知見がますます発信されていくと感じました。

写真2:郡山先生シンポジウム発表 写真3:小板橋先生シンポジウム発表
写真4:藤田先生口演発表

心エコー図学会の目玉の一つに「ウルトラクイズ」があります。今年も心エコー会のアナウンサーとの呼び名の高い小板橋先生が司会をされ、今年も大いに盛り上がりました (写真5)。当科から出場しましたチームAKOは、残念ながら入賞できず来年は豪華賞品をゲットできるよう頑張ります。

写真5:ウルトラクイズの先生方

(前列左から2番目が小板橋先生)

そして、心エコー図学会一番の楽しみといってもいい、大宴会!!名前の通り、総勢133名もの参加で大いに賑わいました (写真6)。学会の醍醐味は勉強だけではなく、飲み会を通じて他の施設の先生方とお知り合いになれたり、普段お会いできない先生にご挨拶できるという、人との繋がりが深まることです。

写真6:大宴会。多すぎて顔を認識するのが大変です(笑)

いままで成人心エコーに関わる医療者が携わっていなかった分野で、心エコーが必要とされる機会がどんどん広がっており、関心が高くなっています。心機能を評価するだけでなく、患者さんの病態把握から治療方針の決定にも心エコーは用いられていましたが、最近では心エコーなくしてカテーテル治療ができない時代になってきています。北里ならではの恵まれた環境で、一緒に心エコーを盛り上げてくれる仲間を心待ちにしています。