医局長のつぶやき

2020年03月

大学院時代の思い出

大学院生活を終えて

医療系研究科博士課程4年 佐藤 俊允

この度、北里大学大学院医療系研究科博士課程を修了し、学位を取得いたしましたので、この場をお借りして御報告させていただくとともに、大学院生活を振り返ってみたいと思います。
私は医師5年目に大学院生1年目となりました。とはいっても5年目は大和市立病院に出向中であり、まだ研究とは何か、論文を書くとはどうゆうことか、まったく理解していませんでした。しかし大和市立病院には幸いに大学で統計の鬼と恐れられた及川医師が赴任してまいりました。及川医師の御指導の下、日本循環器学会の地方会で症例を報告させていただく機会をいただくことができ、これが私の大学院生としての第一歩となりました。また及川先生は積極的に私を「研究をする」ということに巻き込んでくださり、大和市立病院でデータベースを作ること提案していただいたりして、出向中ながら研究のというものを意識して過ごした日々でした。この時はまだ一年でデータベースを20例ほど入力して満足している低レベルっぷりでした。
大学院2年目からは大学に戻り、研究を中心とした生活となりました。虚血班に所属しておりましたが、なかなかテーマが絞り込めず先に進まない日々でした。そんな中、南先生から「Irregular Protrusion」というテーマをいただき、やっと大学院生らしい生活となりました。しかし、南先生から先行論文をいただくも、不慣れな英語で読むことができず、統計の知識がないため解析もできず、それ以前にexcelの使い方がわからずデータをどうすることもできませんでした。おそらく大学院生となった時に誰しもがぶつかる壁に見事にぶつかりました。そんなおり、虚血班の先輩方である藤吉さん、橋本先生、柿崎さん、根本さんからいろいろとアドバイスをいただき、一歩一歩ではありますが、着実に研究が進みました。
少しずつ研究が進み始めた大学院3年目でしたが、論文に至るには数多くの解析を行う必要がありました。統計解析については同期の村松に助けられました。研究が進んでいた村松に統計解析を教えてもらい、スライド作成のアドバイスをもらって研究は加速します。村松とは同期で同じ虚血班で3年間机を並べて苦楽を共にしました。同じ時に同じ苦しみを味わい、潜り抜けた同期がいるということが本当に支えになりました。
大学院生4年となりますがこの年の事で思い出されることが二つあります。一つは4月に参加したアジア太平洋経カテーテル心臓血管治療学会議 (TCTAP)です。初の国際学会でまったく質疑応答ができなかったことも、韓国の地で阿古先生と御一緒に焼き肉を食べに行ったことも、いまでもとても良い思い出です。もう一つは卒業論文である「Gender and plaque morphology」という研究です。南先生からこのテーマをいただき、多くの論文を読み、多くの解析を行い、膨大な量のスライドを作成しました。そして毎日のように南先生とメールで連絡をして、逐一研究の進捗状況を報告し、論文を練り上げました。この論文に没頭した日々のことをいまでも良く覚えています。おかげで無事に同期と共に卒業できました。
こうして4年間の大学院生活を振り返ってみると、本当にいろいろなことがありましたが、充実した日々でした。そして多くの方々に助けられていたことに改めて気づかされました。最後になりますが、循環器内科学・阿古潤哉教授、医療衛生学部・東條美奈子教授、循環器内科学・南尚賢診療講師を始め、お世話になりました先生方に厚く御礼申し上げます。

 

激動の大学院生活を振り返って

医療系研究科博士課程4年 西成田 亮

この度、北里大学大学院医療系研究科博士課程を修了し、学位を取得いたしましたので、この場をお借りしてご報告させていただきます。

私が大学院に入学したのは、卒後5年目になります。最初の1年目は外の関連病院で臨床メインでやっておりましたので、循環器内科としては実質3年の臨床経験の後に大学院生活が始まったことになります。臨床の知識や経験値がまだ不十分なまま、院生活に入ることに不安はありましたが、2017年4月から大学院生として不整脈班に所属しました。私に与えられた研究テーマは、「ペースメーカとAF burden」という、やや漠然とした状況で始まりました。患者の対象群は?定義はどうする?何をアウトカムにする?何がわかっていて、何がわかっていない?研究の組み立て方や統計解析方法などもままならない中、とにかく論文を読み漁り、試行錯誤を繰り返し、壁にぶつかり、軌道に乗るのに半年~1年かかったと思います。週3回でカテーテルアブレーションへ参加し、同時並行で2つの前向き研究(動物実験とBrugada症候群患者のリスク層別因子の解析)を行っていた事、月6-9回の当直を行っていた事などがあり、身体的にも精神的にもとても辛かったのを覚えています。その辛い時期を乗り越え、少しずつ努力が実ってきたのか、着手している研究の結果が出始めました。「努力が必ずしも報われるわけではないが、何かをつかみ取るためには必ず努力が必要である」というベートーベンの格言は、私の今までの人生において常に柱になっていますが、大学院生活もまさにそれを体現した経験であったと思います。最終的に私の主論となった内容は、植込みデバイス内で記録されたAtrial high rate episode(AHRE)と心不全の関連性についてで、いまだエビデンス不足の無症候性心房細動に対して、その管理や予後を示す一つの重要な研究としてご評価いただき、circulation journalに掲載されました。また基礎系統では、犬心房細動モデルを用いたSGLT2阻害剤の心房細動抑制効果について研究しました。SGLT2阻害剤の多面的効果の一つとして心臓への抗不整脈効果をみた内容で、欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓病学会(AHA)にて光栄にも英語での口頭発表の場をいただきました。

この4年間の大学院生活でESC, AHA等の主要国際学会、国内外の不整脈学会などで全18演題の発表の機会をいただくことができました。また論文は和文含め4本の掲載に至り、卒業時には優秀学位論文賞を頂くことができ大変うれしく思います。現在執筆中の論文2本もしっかり形にすべく頑張りたいと思います。

そして大学院生活では、リサーチ以外にカテーテルアブレーション・デバイス植込み手技に関して、深く学べたという事もとても大きな財産です。本格的にEP(electrophysiology)の世界に入った当初は、知識や心臓解剖の理解不足、繊細な電位判読の困難さ、手技の複雑さ等非常に苦労しました。当院はここ数年で誇らしくもアブレーション件数が激増し、ハイボリュームセンターとなった現在の環境で、偉大な先生方の下でカテーテル・デバイスを学べたことは、非常に幸運であり、感謝の限りです。時には愛のムチが心に突き刺さったこともありましたが、今後の不整脈医としてのキャリアにおいては、間違いなく糧になりますし、大きな自信にもなったと思います。

学位取得は、自分の研究・専門分野を熱意をもって極め、実力が認められた証です。私の大学院4年間は、経験だけではない、エビデンスに裏打ちされた臨床能力を生かしていく方法を学ぶことができた、また人間的な成長も得られた(と思っている)、そんな有意義な4年間だったように思います。今後は、臨床の現場へ戻り、循環器内科医として今まで以上に責任の重い立場になります。普段の臨床をしっかりこなしつつ、専門医資格の取得や臨床に生かせる研究、アウトプットを出していくことが、今後の目標になります。北里大学医学部循環器内科学教室の名に恥じぬよう、引き続き精進していきたいと思います。

最後になりますが、お忙しい中リサーチや学会発表の指導、カテーテルアブレーションの指導をご教授くださいまいした、庭野慎一先生、深谷先生、岸原先生、佐藤(陽)先生、及川先生、石末先生、鍋田先生、また基礎実験系統で大変お世話になりました庭野裕恵先生、中村先生、吉澤先生、五十嵐先生、数多くの苦楽を共にした同期、後輩、その他数多くのご協力をいただきました先生方、スタッフの方々に感謝の意を込めまして、私の呟きを締めさせていただきます。

JHRS 2017 in Hokkaido, poster presentation, 札幌ビール園にて

ESC congress 2018 in Munich, moderate poster session (best presenter award)

第11回植込みデバイス関連冬季大会 (会長: 庭野慎一先生)、大会最終日

AHA congress 2019 in Philadelphia, oral session、エントランスに

同期旅行、屋久島縄文杉前にて

 

大学院生活を振り返って

医療系研究科博士課程4年 堀口 愛

このたび、大学院を無事に卒業し、博士になることが出来ました。感謝の念をこめて、大学院生活を振り返ってみようと思います。この一文書いてるだけですでに泣きそうだし、というか泣きました。笑

私は医師5年目の年に、不整脈班として大学院に入りました。
研修医の頃は、大学院という存在自体は知っていたものの、自分が研究に携わるというイメージは全くできませんでした。ですが、大学での病棟医生活の中で諸先輩方を通じ、研究を通して新たな視点を得られ、さらにそれが臨床に還元されていくと聞き、大学院への進学を決意しました。元々、入局のキッカケが不整脈診療であったことや、その割には全く分からない分野であったこともあって、不整脈班の一員として大学院生活をスタートすることとなりました。

研究テーマとしては、最初に、阿古教授、深谷先生から「経皮的冠動脈形成術施行後の心房細動患者の、慢性期の抗血栓療法の実態」を頂きました。経皮的冠動脈形成術施行患者と、心房細動患者は、いずれも塞栓予防に抗血栓療法を必要としますが、それぞれに適した抗血栓療法が異なります。このため、経皮的冠動脈形成術施行後の心房細動患者においては多剤併用療法が考慮されますが、出血リスクが伴います。塞栓リスクと出血リスクを踏まえた慢性期の至適抗血栓療法は不明であったため、当院とその連携施設での実態を調査しました。
初めての研究で要領も分からず、今思えば、もっとうまいやり方もあったのかもしれませんが、比喩でなく何千回とカルテをひっくり返し(泣きながら)、そしてそれをつぶやきで暴露されながらも(2018年4月の飯田先生のつぶやき)、厳しくも優しい周囲の方たちのお力添えのおかげで、論文として形にすることが出来ました。
初めて論文がacceptされた時、publishされた時の強い達成感と喜びを鮮明に覚えています。先輩が「生きた証だよね!」とおっしゃっていましたが、そういうことなのかもしれません。

また、学会発表の機会もたくさん頂きました。2018年のAPHRSでは、当院でのWCDの使用実績の発表で、岸原先生のご指導のもと、YIAを受賞することが出来ました。2019年のAHAでは、及川先生のご指導のもとポスター2演題を発表させていただきました。いずれの学会でも、他国の研究者と関われる面白さを感じることが出来ました。どの学会も思い出深いものでありますが、特に海外学会では、最新の知見の発表や、世界の様々な研究を見ることが出来、とても刺激になりました。最新情報や抄録は、日本にいても見ることは可能ですが、現地での学習のパワーはやはり強いものだと思います。また、国際学会に参加できる機会を待ち遠しく思います。

振り返ってみれば、大学院生活、特に最初の1年は、臨床研究、基礎実験、アブレーションと、何もかもが初体験で、とにかくあっという間でした!!!!!!
全く分からない心内電位に3Dマッピングシステム、スティミレーターは全く言うこと聞いてくれないし。基礎実験もまぁうまくはいかず、体からケモノ臭を感じながら動物実験室に通う日々… 自分の無知さに悲しくなりながら、とはいえやるしかなく、、
終わってみれば、たくさんの学会発表、英語論文2本と和文1本を仕上げることが出来、同期の西成田先生と一緒に優秀学位論文賞を頂くことが出来ました。
本当に、ご指導いただいた先生方には感謝の念しかありません。また、後輩たちからもたくさんの学びがありました。アブレーションでは、素晴らしいコメディカル達と仕事をすることが出来、チーム医療の大切さを改めて感じることも出来ました。この場を借りて、関わってくださった全ての方に、御礼申し上げます。
研究も臨床も尊敬できる先生方と、研究、実験、アブレーション、飲み会も含めて(笑)、院生生活を過ごすことができて、不整脈班に入ってよかったと心から思います。
後輩のみなさん、不整脈班で待っています。笑

これからは、院生生活で学んだことを臨床に還元し、研究も引き続き頑張っていきたいと思います。4年間、本当にありがとうございました。

APHRS 2018 in Taipei. 岸原先生の指導の下、当院のWCDの使用実績をまとめ、YIAを頂けました。

AHA 2019 in Philadelphia. 集合写真の偏り方がアメリカって感じ。笑

2019年のデバ研。我らが庭野先生が大会長を務められました。

同期にも恵まれました。(左) 院入学直前、(右) 卒業決定のお祝い会

 

大学院生活について

医療系研究科博士課程4年 村松 裕介

「博士号は足の裏の米粒みたいなもんだ。とらなきゃ気持ち悪いし、とっても食えやしない」亡くなった祖父の言葉で、大学院に進む予定だった自分はなんとなく聞いていたが、大学院にいき博士号をとる理由が当時の自分の中ではっきりとしたものはなかった。なんとなく、①せっかく大学病院に所属しているし、②循環器の諸先輩方の多くが進学しているし、③論文や研究に興味が少しあった、という心境であったことは記憶している。

と、大学院に入ったころの自分を思い出しながらこの原稿を書いておりますが、結局大学院に入って良かったと思っていますので、私と似たような心境の後輩がいれば、なんとなくでもよいので大学院にいく魅力を伝えられればなと思います。私の研究テーマはLp(a)という脂質と冠動脈プラークの脆弱性の関連をOCTを用いて調べるものでした。調べ始めたころはLp(a)自体聞きなれない単語でしたが研究を行っているうちに次々とLp(a)関連の論文が報告され、これが世界のスピードなんだ!と驚かされ、そのスピード感やテーマには旬があるということを痛感しました。統計なんて医学部1年生のころに進級するためだけに勉強した後、一切触れてきませんでしたが、研究には必要なもので月に一回開かれる虚血班のミーティングのために必死に勉強しました。最初に会得した二郡間の比較を得意になって発表していると、ある日、上司である南先生から「同じことばかりではなく違う手法もあるでしょ?」といわれ、その通りだなと反省した時がありました。それは今の自分にとって大切な事で、統計も研究も、そして臨床、手技も自分がすでにできる事を繰り返すことはとても簡単で、自分にできない新しい事をするにはとても努力が必要です。研究も、論文も、大学院にいき新しくできるようになった事で、これにより今まで対して情報処理できなかったDI情報、学会での発表が理解できるようになりました。大学院にいって良かったと感じていることの一つです。さらに虚血班の中?だけかもしれませんが在学中、循環器三大学会と呼ばれるAHA、ACC、ESCのすべてで発表する機会を得ることができました。海外発表は、その地にいく喜びと、今でも緊張はしますが同じ分野の研究をしている人が質問してくれてそれになんとか答える事がなんだか嬉しかったです。また研究ではありませんが、TAVIチームにも参加し、臨床も充実していました。これも自分にはできない新しい事であり、今後もまだまだたくさんの新しい事を会得しながら成長できたらと思います。
いや、振り返りばかりではなく、後輩たちへメッセージを伝えないとだ。大学院で行うことは今まで臨床でやってきたこととは違います。おそらく統計や英語、データ集め、研究の発表、論文投稿、どれもが初めは難しく、色んな人からご指導していただきながら少しずつ成長していく。私はそんな経験が出来た貴重な数年間だったと思います。いただいた博士号自体にはまだ効力を実感はしておりませんが、世界中の研究者がアクセスするpubmedに自分の名前の論文が掲載されたこと、大学院で得た貴重な体験を経験した今では、同じ科の後輩に対して、「足の裏に米粒つけて歩くよりとってしまえば気分がよく歩けるもんだよ」、と大学院進学を勧められそうです。
最後にこれまでに多くのご指導を頂きました阿古潤哉教授、下浜孝郎先生、目黒健太郎先生、南尚賢先生、虚血動脈硬化班の先生方に厚く御礼申し上げます。

2018. AHA (Chicago)

2019. ACC (New Orleans)

2019. ESC (Paris)

おまけ:大学院入学当時の仲良し同期。無事全員博士!(皆、なんか一緒の写真乗っける言うから一応)