医局長のつぶやき

2022年05月

第264回日本循環器学会関東甲信越地方会 Resident Award優秀賞

循環器内科学 助教 飯田 祐一郎

北里大学循環器内科学の飯田です。夏の到来が早く暑さに朦朧としております。
今回、当院研修医で昨年度に循環器内科をローテーションしてくれ、今年にも回ってくれる初期臨床研修医小森友花子先生が、2022年6月開催の第264回日本循環器学会関東甲信越地方会のResident Awardで症例発表をしてくれましたのでご報告させて頂きます。
症例発表の内容は、不整脈原性右室心筋症と診断されていた症例が実は心サルコイドーシスであった症例についてでした。不整脈原性右室心筋症も、心サルコイドーシスも診断基準が複雑であり重複していることなどもあることから理解を深めることが難しい症例であったと思います。
まず、Resident Awardを発表するまでの流れです。当院循環器内科での初期研修を行うにあったって、病棟では疾患や治療手段が多様化してきていることから循環器内科の中でも班(大きくわけて虚血、不整脈、心不全)を作り、研修医の先生の希望も踏まえてローテンションの日程を組んでいます。小森先生は2022年2月からの2ヶ月間当院循環器内科の研修を回ってもらいました。地方会の演題募集が行われている際にカンファレンスにいる研修医の先生たちに「やってみたい先生いる?」と聞いてみたところ、即答で返事をしてくれたのが小森先生でした。ちょうど受け持っている症例が先ほど挙げた症例で、ケースプレゼンテーションをするのには適切と考え、日本循環器学会規定の抄録345字に相談しながらまとめました。循環器内科をローテンション終わってからの準備でしたので、他科ローテンションの合間にスライド作り、しかも初めてであったので大変だったと思います。そんななか、疾患について良く勉強してくれており、論点についても理解してくれていたのには驚きました。小森先生が作ってくれたスライドをプレゼンのために必要なことやスライドの書き方なども含めて一緒に改定作業を繰り返し、スライド原稿作りを進めました。完成後は医局内での予演会での発表です。当科では水曜日に教授回診後に予演会を行っております。本番よりも厳しい指摘を受けやすい予演会でしたが、上手にプレゼンしてもらい、安定感がありました。

写真1. 直前最終確認中

本番はコロナ禍感染予防対策で完全web開催となり、4Nカンファレンスルームから発表しました。発表内容は2022年の循環器内科ガイドラインで記載されている不整脈原性右室心筋症の診断基準を満たしている重症心不全の症例です。診断され各種治療を行うも、病状進行を認めたため、当院へ紹介され再度各種精査を行ったところ、心サルコイドーシスの診断がされました。診断基準や所見が重複する点があることから診断が難しい両疾患です。世界的にも症例報告は散見されておりますが、本症例の場合は心サルコイドーシスに非常に有効とされるPET検査などの画像検査では陽性所見が出ておりません。唯一、心内膜心筋生検を行うことで心サルコイドーシスと診断することができ、原因疾患に対するステロイド治療を開始できた点で、心内膜心筋生検の必要性を改めて認識させられる症例でした。両疾患とも難しい病気であり、さらに診断基準も難しいのですが、小森先生が丁寧に考察し発表してくれ、初めての発表とは思えないほどでした。そしてなんとResident Award優秀賞を受賞されました。初めての挑戦で時間がない中、素晴らしい結果でした。良い経験になったのではないでしょうか。
最後に、忙しい中頑張ってくれてありがとうございました。今年も再度ローテンションしてくれるので頑張りましょう!!
当科では研修医の先生にも発表の機会や希望があれば全力でサポートします。

写真2. 終わったぜ イエーイ

飯田 祐一郎